遺言について


遺言により、相続人以外の者に財産を譲り渡したり、相続人の誰に何を相続させるかなど、遺言者の意志にかなった死後の財産処分が可能になります。

相続人間の公平を欠かない形で遺言で具体的に遺産分割方法を指定しておくことは、遺産分割をめぐる紛争を事前に予防する効用がありますが、不適切な内容の遺言はかえって紛争のもとにもなります。

遺言によって法定相続分より少ない遺産しか取得できないこととなる者に対しては、納得してもらえるよう生前にまたは遺言書の中で理由を説明して理解してもらうように努め、遺留分を有する相続人に対しては少なくとも遺留分程度は相続させるようにするなど配慮しておく方がよいでしょう。 

遺言がない場合


遺言がない場合は、法定相続人の間で遺産分割協議をして、誰が具体的にどの遺産を相続するか決定します。

法定相続人と法定相続分は、下表のとおりです。
   
 

 法定相続人

 法定相続分

第1順位    配偶者と子  配偶者1/2  子1/2
第2順位    配偶者と直系尊属   配偶者2/3  直系尊属1/3
第3順位   配偶者と兄弟姉妹   配偶者3/4  兄弟姉妹1/4

          

遺産分割協議は、法定相続人全員の合意で決定しますので、法定相続分と異なる割合で遺産分割することもできます。
遺産分割協議に基づく
不動産の相続手続については、こちら。

法定相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。
調停でも合意が成立しない場合は、家庭裁判所の審判で決定されます。

遺産に借金が多いなどで一切相続したくない場合は、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家裁に相続放棄の申し立てをします。
相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったことになります。
遺産分割協議で自分は一切相続しないということに決めても(事実上の相続放棄)、債権者に対しては自分の法定相続分の範囲では、債務を負担しないことを主張できません。
相続放棄の手続については、こちら。

遺言の作成方式


遺言の作成方式は、法律で厳格に定められており、方式に反する遺言は原則として無効になります。


一般的に多く作成される、@公正証書遺言 と A自筆証書遺言 の作成方式についてご説明します。

@公正証書遺言
遺言者が公証役場で証人2人の立会いのもと、公証人に遺言内容を口述し、公証人がその内容を筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせまたは閲覧させ、遺言者・証人及び公証人が署名捺印して、公正証書として作成する。

長 所
1.原本が公証役場に保存されるので、紛失の恐れがなく、相続人による破棄、
  隠匿や変造の恐れもない。
2.家庭裁判所の検認が不要なので、遺言者死亡後即座に名義変更等の手続
  (遺言の執行)ができる。

短 所
1.費用がかかる。
2.証人が2人必要である(推定相続人、受贈者、これらの配偶者及び
  直系血族は証人になれない)。
 

 

A自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文、日付、名前を自書し、押印して作成する。

ただし、平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、別紙として財産目録を添付するときはその目録については自書でなくてもよいこととなりました。
財産目録の形式に決まりはありませんので、パソコン等で遺言者または遺言者以外の人が作成しても構いませんし、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳のコピーを添付することも可能です。
自書によらない財産目録を添付する場合には、その財産目録の各ベージに署名押印が必要とされています(裏面にも自書によらない財産目録の記載がある場合は裏面にも署名押印が必要)。

また、令和2年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度ができましたので、それを利用すれば下記の自筆証書遺言の短所が一部軽減できます(自筆証書遺言保管制度)。


長 所
1.費用がかからない。
2.作成や作り直しが気軽にできる。

短 所
1.紛失のおそれや他人に破棄、変造される恐れがある。
2.遺言者死亡後、家庭裁判所へ検認の申立が必要となるため、相続人全員に
  家庭裁判所から検認のための呼び出しがされる。
  検認がされないと遺言書に基づく名義変更等の手続ができない。
3.内容が不明確で遺言の執行ができないことがある。

遺留分


遺留分とは、遺言によっても侵すことの出来ない法定相続人に認められる権利です(ただし、法定相続人が遺言者の兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹に遺留分はありません)。

遺留分の割合は、法定相続人が直系尊属のみの場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1です。

遺留分を侵害する遺言も無効ではありませんが、後に遺留分減殺請求がされると受遺者は遺言者の財産を遺留分権利者と共有することになります。
ただし、令和元年7月1日以降に開始した相続については、相続法の改正により遺留分権利者は受遺者に対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払のみを請求することができることとされました。したがって、不動産等の遺産に複雑な共有関係が生じなくなりました。


遺留分減殺請求権の時効は、遺留分を侵害する遺言があったことを知ったときから1年、または、遺言者死亡のときから10年です。

特に遺言書を作成しておいた方がよい場合


@子供がいない夫婦
法定相続人は配偶者と兄弟姉妹になりますが(両親、祖父母が亡くなっている場合)、兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者に全財産を相続させる遺言に対し兄弟姉妹は文句を言えません。

A相続人がいない人
遺言がないと原則として国に遺産が帰属します。
ただし、被相続人と生計を同じくした人や療養看護に努めた人など(特別縁故者)は、家庭裁判所に相続財産の分与を請求することができます。

B事業を特定の人に継がせたい人
相続人の1人に事業を継がせたい場合には、事業用の資産や会社の株式を事業を承継する者に相続させる遺言をしておくことが望ましいです。
遺言がないため、遺産分割で事業用の資産や会社の株式が分散されると、事業の継続に支障が生ずる恐れがあるからです。

C内縁の夫婦
内縁の配偶者は相続権がないので、遺言がないと何も相続できません。

公正証書遺言作成必要書類等


(1)遺言者

 ・身分証明書(運転免許証、保険証等)
 ・実印
 ・印鑑証明書(3ヶ月以内)
 ・戸籍謄本
 相続させる(または遺贈する)財産が不動産の場合
 ・不動産の登記簿謄本
 ・不動産の固定資産評価証明書
 相続させる(または遺贈する)財産が不動産以外の場合
 ・預金通帳のコピー等その財産の内容及び価額がわかる資料


(2)受遺者(推定相続人等親族の場合)

 ・戸籍謄本等(推定相続人等であることが判明するもの)


(3)受遺者(親族以外の場合)

 ・住民票
  (法人の場合は、法人登記簿謄本)


(4)遺言執行者を定める場合

 ・遺言執行者の住所、氏名、生年月日、職業がわかるメモ


(5)証人(2名)

 ・証人の住所、氏名、生年月日、職業がわかるメモ
 ・認印

公正証書遺言作成公証人手数料


目的の価額 

手 数 料 

 100万円まで   5,000円 
 200万円まで   7,000円 
 500万円まで   11,000円 
 1,000万円まで   17,000円 
 3,000万円まで   23,000円 
 5,000万円まで   29,000円 
 1億円まで   43,000円 
         3億円まで、5,000万円ごとに13,000円加算 
        10億円まで、5,000万円ごとに11,000円加算 
        10億円超は、5,000万円ごとに8,000円加算 



<目的の価額の算定方法>

相続人、受遺者毎に価額を算定して、合算します。

不動産は、固定資産評価額を基準に評価します。

相続、遺贈額合計が1億円に満たないときは、11,000円を加算します。

祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円になります。

以上のほか、公証人が病院等に出張して公正証書を作成するときは、目的価額による手数料が5割増しになり、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が別途かかります。

遺言関係司法書士報酬

 

(1)遺言書作成支援報酬

 ・基本報酬  55,000円〜110,000円

 ・高額資産または複雑事案加算
   積極財産(資産)の額が1億円以上(不動産については固定資産評価額による)
   の場合または遺言の内容が特に複雑になる場合や特殊な事情がある場合に、
   依頼者との協議により、55,000円以内の金額を加算。

 ・公正証書遺言の証人日当(司法書士及び事務員が証人になる場合)
   証人1人につき11,000円

 ・必要書類収集代行 1通につき1,100円


(2)遺言執行者報酬(司法書士が遺言執行者になる場合)

 ・基本報酬
   遺産の積極財産(資産)の額(不動産が遺言執行の対象になる場合は固定資産
   
評価額による)の1.1%。
   ただし、積極財産の額の1%の金額が30万円に満たない場合は33万円。

 ・複雑事案加算
   遺言執行の内容が特に複雑になる場合や特殊な事情がある場合は、遺言者との
   協議により、前項の割合(%)及び最低額を引き上げさせていただきます